千里のお茶の間

マンションに和室を埋め込んだ改装工事です。

土・木・紙・竹… 日本の建築を支えてきた素材で出来上がった空間は、その技術の確かさやディテールの表現も手伝って、想像の枠を超えた絶妙な「やさしさ」を生み出します。マンションの限定された空間の中だったから、より強く感じたのかもしれません。

しかし、この「空間のやさしさ」は画像ではなかなか伝わりません。空間体験しないとわからないし、やさしい心で感じないと感じられないような遠回しな空間性能は、その良さに気付かれる前に避けられ、どんどんその需要は減っています。見た目のインパクトに弱く、モダンさが感じられないのも避けられる理由だろうし、メンテナンス性っていうのも理由の一つに挙げられると思います。

でもこういう空間には、ちょっと佇んでから「…やっぱりいいねぇ。」って、思わず口をついて出るような空気感があるんです。 そんな空気感を大切にしたいと思っています。

原点に立ち返る空間

改修による違和感を払拭し、なんとか土間をうまく活用できないだろうか? そんなご要望に明確にお答えした実例です。

原点に立ち返りそこに現代の生活を投影することで、問題の土間を靴を脱いで生活する空間の一部として蘇らせました。 石張りのこの空間は、夏場は石の冷たさが心地よく、冬場はその石が薪ストーブによって温められ、輻射熱のやわらかい暖かさを運んでくれます。 また、傷んでいて新しくした材料や新たに追加した材料は、敢えて新しいままで仕上げています。

古民家なのに新しい。そんな不思議な感覚の内部空間になっています。

落ち着きと安心感に満ちた土間

昭和期に一旦寄り道し、その当時らしい形・工法で設置されていた水廻りの老朽化による改修に合わせて、あえて古民家らしい形で改修した事例です。

一気に工事に係ることが出来ない事情もあって、手を加える部分と手を加えない部分の違和感を如何になくすかに重点を置きました。

ですから、目新しさには欠けるかもしれませんが、落ち着きと安心感に満ちた土間空間となっています。